生成AIの現在地|2025年春・画像生成編
創作のための人工知能は表現の道具になれるか|イメージをつくるAIとの向き合い方
2025年4月22日

はじめに
AIによる創作をめぐる議論は賛否に二極化しがちですが、私は二元論ではなく、創造性を支えるAIのあり方や、文化や未来の可能性に目を向けたいと考えています。
AIツールやノウハウは進化の速度が異様に速く、「現時点でのまとめ」はすぐに陳腐化してしまう一方、SNSなどで“すごい”だけが拡散され、本質が見えにくくなっている側面もあります。あえて立ち止まって現時点を整理し、自分なりの視点で考えをまとめてみたいと思います。
ChatGPTの画像生成アップデートが持つ意味
最近、ChatGPT-4o(DALL·E)による画像生成AIのアップデートが話題となりました。このアップデートは、私自身がAIに取り組んできた中でも、さまざまな観点から支持できる方向性であり、ここではその点についてまとめてみます。
一貫性の達成によって可能になること

これまでも画像生成AIは、一枚絵としては十分に高品質でしたが、実際に使える場面は非常に限定的でした。その理由のひとつは、画像の場合、雰囲気でよしとされることも多い音楽とは異なり、構図や登場人物、背景要素などの一貫性が求められるケースが圧倒的に多いからです。
たとえば「次の画像でも同じキャラクターがいないと意味が通じない」「手にこの商品を持っている必要がある」といった場面は多く、特に広告やブランドのように文脈や設定の整合性が重要な領域では致命的でした。動画制作でも同様で、キャラクターや世界観が一致しなければストーリーが成り立ちません。
ちなみに、一貫性を高めるための手法としては以前から「LoRA」がありますが、こちらは一貫性を保てる反面、柔軟な表現が難しくなる傾向があり、ツールとしても汎用性に欠けるという課題がありました。
このような画像生成の構造的な壁を突破したことは、"すごいけど使えない"から"実用的に使える”フェーズへの転換点でもあります。
独自性、多様性の担保

AIは大量の学習データをもとに出力する技術であるため、その特性上、中央値バイアスがかかりやすいといえます。結果、”パクリ”のように映る画像も多く生まれ、反感を招きやすい状況にあったともいえるでしょう。また、日本人のようなローカルな特性は再現されにくく、多様性の観点からも問題があったと思います。これらの点については、私自身もAIに対して批判的な立場を取っていました。
しかし、直近のアップデートでは、かなり独自性のある画像であっても、その表現の特徴を保ちながら再現できるようになってきているように見えます。もちろん、まだ完璧とはいえませんが、表現の多様性をより広く担保する方向に進化していることは、創作に携わる人たちにとって、支持すべき方向性だと感じます。
高い技術障壁だったプロンプト芸からの解放

プロンプトを編み出すならゼロから作った方が早いケースも
これまでの生成AIは、プロンプト芸とも呼べきテクニックが求められてきました。決して簡単に作品が作れるものではなく、新たな技術障壁が存在していたと言えるでしょう。そして、その壁をいち早く乗り越えて差別化を図ろうとする人たちも多くいたと思います。
しかし、ChatGPTのように言語解釈能力の高いAIによって、こうした技術格差も徐々に埋まっていくことになりそうです。生成AIは“次世代の能力主義”を助長するものではなく、むしろ創作の真の民主化を実現しうる技術なのであり、そこにこそ大きな価値があると私は考えます。
制作業界の一部では、技術格差が構造変化を妨げ、ある種の“格差社会”が温存されてきました。しかし今後は、技術を習得していなくても本質的な創造力を持つクリエイターが、より正当に評価されるようになる可能性があるのです。
意外と使えない“それっぽい”コンセプトビジュアルと、脱してきたAIぽさ、センスの補間
AI絵師がクリエイターになれない理由

SNSでは、完成度の高い一枚絵が多く共有されていますが、実務のコンセプトビジュアルとして実際に使える場面はそれほど多くないと私は思っています。
本来、ブランドコンセプトを伝えるビジュアルには、世界観や思想、ストーリーまで含めた“意味のある構造”が必要です。AI特有の“それっぽさ”だけで、ブランドは作れません。たとえSNSで一時的な注目を集めたり、AIブームの波に乗って仕事を得られたとしても、それだけでは「継続的に選ばれるクリエイター」「将来的に本質的な価値を持つ存在」にはなれませんし、そうあるべきでもない――私はそう考えています。
センスの補完

適当な写真から構図も補正してバランスの取れたイラストに変換
一方、“伝わる”ことを重視する用途においては、AIがセンスを補完してくれる場面も確かに増えており、この点にも注目しています。
以前は「チープで使えない」と感じていたような出力も、あくまで私の基準ですが、今では「このまま使えるかもしれない」と思えるクオリティに近づいてきています。

説明用のイラストも意図を理解してデザインされている
特に驚いたのは、テキストやレイアウト処理の精度が向上していることです。私は、画像に対する多様なデザインレイアウト、特に日本語の扱いに関してはAIが苦手だと思っていたので、デザインの文脈をある程度理解したような配置がされているのを見ると、「なるほど、ここまでできるようになってきたか」と感心させられました。
まだ突破できない課題
とはいえ、もちろんまだまだ完璧ではなく、課題も残っているように見えます。
リアルな人物描写

かなり近いが、やっぱりよく見ると同一人物ではない
人物描写においては、依然として“最後の詰め”が残されていると感じます。
特に実在する人物を描く場合、顔の輪郭やパーツの配置がわずかにずれるだけでも、同一人物には見えなくなるなど、非常にシビアな精度が求められます。
特殊なアングル、シチュエーション

通勤中の女性の画像はリアルだが、幻想的なシチュエーションを指定した途端に絵のようになる
特に、特殊なアングルやシチュエーションなど、学習データが限られているパターンでは、途端にCG的な違和感や破綻が生じることもあります。
独自のスタイルの幅

もともとは特徴ある顔のデザインにしていたが、徐々に顔が変化、出力が安定しない
先述のとおり、大きく改善されてきたとはいえ、独自性の強いキャラクターデザインやファッション、文化的な文脈を含むビジュアルにおいては、AIが制作者の意図を正確にくみ取るのは、まだ難しいと感じる場面もあります。
その結果、均質的な表現に寄ってしまうことも少なくありません。
たとえば、上記の事例では、徐々に日本アニメ調に寄っていき、顔の出力が安定しないケースがありました。こうした出力については、私も積極的には支持できません。
とはいえ、今後はより柔軟で多様な表現バリエーションを再現できる方向に進んでいくようにも思われます。こうした課題は、まさにAIにとって“最後の詰め”の部分であると言えるでしょう。
プロ向けの制作補助ツールとしてのAI
背景除去、ノイズ除去、色調整といった「便利ツールAI」は、すでにAdobeやCanva、Figmaなどの主要な制作プラットフォームに標準機能として組み込まれ始めています。これらのAIの使い方に異を唱える人はまずいないと思いますが、よりクリエイターのこだわりに寄り添う「補助的AI」のあり方にも視点を広げてみたいところです。
以下では、こうした補助的AIの可能性を示す一例として、いくつかのツールを紹介します。特定のツールを推奨する意図ではありませんが、「こうした方向性もある」という観点でご覧いただければと思います。
描いたスケッチや構図でそのまま生成
落書きのようなラフスケッチや、ざっくりとした色分けをアップロードするだけで、構図通りの画像を生成できるツールも登場しています。
以下は、その一例として挙げられる「KREA」です。
Krea: AI Creative Suite for Images, Video & 3D
krea.ai
https://www.krea.ai/
3D×AI仕上げの方向性
3D空間上でポーズやカメラアングルを決め、それをもとにAIが画像を生成するという手法も、よく見られるようになってきました。
これらの事例のように、この場面のここだけはどうしてもこの構図にしたい、というこだわりを叶える「構成・演出は自分、仕上げはAI」という共創スタイルは、プロのクリエイターには受け入れられるフローだと思っています。
自分のスタイルを増幅させる画像生成
ここからは違うアプローチ、ゼロからの生成ではなく、自分のスタイルを学習して拡張してくれるタイプのAIについても触れてみます。
exactly.ai | bespoke ai models, built for your brand
exactly.ai
https://exactly.ai/
上記の「Exactly AI」のようなツールでは、自分の描いたイラストや作品を何枚かアップロードすると、そのスタイルをAIが学習し、まるで自分が描いたような新しい作品を生成してくれます。自分のクリエイティブを拡張する相棒として、完全自動生成の限界やオリジナリティの希薄化などに対するひとつの方向性といえそうです。
たとえば、自分の作風をベースにしたアウトプットを効率よく展開できれば、SNS投稿や派生パターンの制作もスピードアップするかもしれません。また、広告やタイアップなどの商業的な場面でも、作家自身にブランドや物語性があれば、「この作風でなければ」という唯一性がAIによって補完され、活かせる場面も出てくるのではないでしょうか。さらに、ファンと一緒にキャラクターや世界観を育てていくような文脈では、作家のスタイルを共有しながら、UGC的に作品を広げていく使い方も考えられそうです。
まとめ
これまで紹介してきた画像生成AIの進化とその方向性について、私は基本的に支持しています。私がAIに取り組む傍ら懸念していたポイントのひとつは、AIが大量の学習データをもとに生成する特性上、どうしても中央値バイアスがかかりやすい点でした。日本のようなローカルな表現には弱く、個人のこだわりや世界観が平均化されてしまうのは、表現者として望ましいことではありません。
しかし今、大規模なAIインフラには、クリエイターの作風と意図を補完するような仕組みが生まれ、“作り手の表現を出発点とする生成”が少しずつ現実になってきています。AIが感性や文脈を読み取り、表現に寄り添ってくれる未来が来るとすれば、それは単なる“便利な技術”ではなく、創作の自由を支える心強い味方になり得るはずです。
私自身、ブームに乗っただけの“AIっぽいクリエイティビティ”には懐疑的です。けれど、技術格差が縮まり、経験や環境に縛られずに、純粋に「作りたい」という気持ちを持った人たちが、自由に表現できる未来が拓けるなら、それはとても希望のあることだと思います。